2009-08-28

砂の女


★★★★★
昆虫採集に出掛けた先で遭遇する砂と女との生活。

そんな世界あるわけ無い。と思えるような世界が、男の追い詰められた必死さから、異様にリアリティーのある世界へと変貌して行く。
蟻地獄へと巻き込まれるように、話の中へとズルズルと引き摺り込まれ、やがて私も抜けなくなった。

一見すると砂に埋もれた特殊な部落の話に思えるが、これは全ての人の人生に当てはまる切れ端なんだと思う。

転職をしてこんな会社に入ってしまった、結婚してこんな生活に変わった。
人は多かれ少なかれ、自分が砂に埋まった家に閉じ込められたような、八方塞がりな状況を経験したことがあるのではないか。と。

どんな状況にあれ、その生活に慣れてもがかなくなった時、そこにはまた、新しい光が射し込んでくるのだろう。
という暗示的作品にも思えた。

2009-07-22

1Q84


★★★☆☆
芸術家は問題を提起するだけで、解決する事は出来ない。

全く全貌が明らかになっていなかった「1Q84」
社会で日々繰り返される、悶々とした事件達。
子供が選ぶ事の出来ない、両親と言う存在。
マスメディアの報道がある側面からしか描写せず、その真実を歪めているもどかしさ。
村上氏のそんな心の葛藤が垣間見える。

「約束された場所で」を読んでいると、リンクしているなと感じる。

小説や数々のインタビューを繰り返して来た、氏のまとめ、の書き下ろし作品なのだろうと思う。

これまでの、長編小説とは匂いも色も変わりつつ有る。
でも、耳、セックスだけのガールフレンド、心で繋がる誰か。
そんなキーワードは健在。

青豆と天吾の印象が読み始めと随分変わった。

2009-07-05

ザ・フォール/落下の王国



★★★★☆
落下した事から始まった一つの物語。

そう。
人生から落下すると、ぐるぐるぐるぐると思考は悪のループから抜け出す事が出来ない。
でも、落下した事で出会うこともある。
あなたが落下しても、そこに可愛らしい網が張られているかも知れない。

「suicideって何?」

生きていなければ、落下すら出来ない。
落下する事は生きている証。

彼は今日もまた落ちる。
馬から、列車から、橋の上から。

そして彼女は笑う。オレンジをもぎながら。

2009-06-17

嘘つきアーニャの真っ赤な真実


あの時にあれだけ仲の良かったあの子。
★★★★★
今頃はどうしているだろう。
何かの拍子にそう思う事は有っても、実際会いに行こう!!っと行動する事が出来ますか?
ましてや国外へ。


彼女の行動力と友人への愛情の深さは、トテツもなく、素晴らしい。

そして島国日本でのほほんと生活している自分の気楽さと、民族への愛情の薄っぺらさに驚いた。

陸続きの大陸の国々が抱える、政治的、民族的な諸問題。
それ故に、芽生える自立心。
在プラハ・ソビエト学校で過ごした彼女達は、島国で暮らす私たちより遥かに多くの事を学び、悩み、生活をしている。

歴史なんて、知ったところで何も変わらないし…と思っていたけど、全ての人間は歴史の上に成り立っている。

なんだか、色んな事を見る角度が少し変わった気分。

2009-06-09

とらちゃん的日常

★★★☆☆
写真が豊富で、にゃんこに癒される。

息抜きにぴったりな文庫。

しかし、自分の愛猫にマジックマッシュルームを食べさせる等という行為が出来るのは、この人位のもんだろう。

そして、らも氏なら仕方が無い。
と思ってしまう私。