2009-09-16

ガセネッタ&シモネッタ


★★★★★
ある黒人の男が言った。
「白くなりたい。女達の話題の的になりたい。いつも女の股ぐらにいたい。」
次の瞬間、その場には小指大のタンポンが転がっていた。

この上の文章から、男がどんな風になりたかったのか、という想像はできる。
しかし、なってしまったタンポンもまた男の発した言葉と相違ないのも事実。

言葉って本当に難しい。

自分が主観で話す時、まざまざと鮮明な映像が浮かんでいる。
けど、相手には何にも浮かんでいない。
簡潔に正確に伝えるなんて不可能に思える。

国際化、と謳いながらアメリカしか見ていない日本。
なんとなく、英語やアメリカなんてどうでもいいやと思えて来た。

右向け右!とならない人で在りたいなぁ。

きつねのはなし


★★★★☆
藪に囲まれた、坂の上の屋敷。
ひっそりとして、周囲に響くのは葉の擦れる音ばかり。
薄暗くジメッとした、和風の座敷が自ずと思い浮かぶ。

何がどうと言う訳ではないのだけど、その文章が表す世界観や情景が、なんだか心地良い。

そんな奇妙な事も本当にあるんじゃないの?この世の中。
寧ろ有って欲しいなぁという、気紛れな願望。が生まれた。

2009-08-28

砂の女


★★★★★
昆虫採集に出掛けた先で遭遇する砂と女との生活。

そんな世界あるわけ無い。と思えるような世界が、男の追い詰められた必死さから、異様にリアリティーのある世界へと変貌して行く。
蟻地獄へと巻き込まれるように、話の中へとズルズルと引き摺り込まれ、やがて私も抜けなくなった。

一見すると砂に埋もれた特殊な部落の話に思えるが、これは全ての人の人生に当てはまる切れ端なんだと思う。

転職をしてこんな会社に入ってしまった、結婚してこんな生活に変わった。
人は多かれ少なかれ、自分が砂に埋まった家に閉じ込められたような、八方塞がりな状況を経験したことがあるのではないか。と。

どんな状況にあれ、その生活に慣れてもがかなくなった時、そこにはまた、新しい光が射し込んでくるのだろう。
という暗示的作品にも思えた。

2009-07-22

1Q84


★★★☆☆
芸術家は問題を提起するだけで、解決する事は出来ない。

全く全貌が明らかになっていなかった「1Q84」
社会で日々繰り返される、悶々とした事件達。
子供が選ぶ事の出来ない、両親と言う存在。
マスメディアの報道がある側面からしか描写せず、その真実を歪めているもどかしさ。
村上氏のそんな心の葛藤が垣間見える。

「約束された場所で」を読んでいると、リンクしているなと感じる。

小説や数々のインタビューを繰り返して来た、氏のまとめ、の書き下ろし作品なのだろうと思う。

これまでの、長編小説とは匂いも色も変わりつつ有る。
でも、耳、セックスだけのガールフレンド、心で繋がる誰か。
そんなキーワードは健在。

青豆と天吾の印象が読み始めと随分変わった。

2009-07-05

ザ・フォール/落下の王国



★★★★☆
落下した事から始まった一つの物語。

そう。
人生から落下すると、ぐるぐるぐるぐると思考は悪のループから抜け出す事が出来ない。
でも、落下した事で出会うこともある。
あなたが落下しても、そこに可愛らしい網が張られているかも知れない。

「suicideって何?」

生きていなければ、落下すら出来ない。
落下する事は生きている証。

彼は今日もまた落ちる。
馬から、列車から、橋の上から。

そして彼女は笑う。オレンジをもぎながら。