2009-07-22

1Q84


★★★☆☆
芸術家は問題を提起するだけで、解決する事は出来ない。

全く全貌が明らかになっていなかった「1Q84」
社会で日々繰り返される、悶々とした事件達。
子供が選ぶ事の出来ない、両親と言う存在。
マスメディアの報道がある側面からしか描写せず、その真実を歪めているもどかしさ。
村上氏のそんな心の葛藤が垣間見える。

「約束された場所で」を読んでいると、リンクしているなと感じる。

小説や数々のインタビューを繰り返して来た、氏のまとめ、の書き下ろし作品なのだろうと思う。

これまでの、長編小説とは匂いも色も変わりつつ有る。
でも、耳、セックスだけのガールフレンド、心で繋がる誰か。
そんなキーワードは健在。

青豆と天吾の印象が読み始めと随分変わった。

2009-07-05

ザ・フォール/落下の王国



★★★★☆
落下した事から始まった一つの物語。

そう。
人生から落下すると、ぐるぐるぐるぐると思考は悪のループから抜け出す事が出来ない。
でも、落下した事で出会うこともある。
あなたが落下しても、そこに可愛らしい網が張られているかも知れない。

「suicideって何?」

生きていなければ、落下すら出来ない。
落下する事は生きている証。

彼は今日もまた落ちる。
馬から、列車から、橋の上から。

そして彼女は笑う。オレンジをもぎながら。