2009-08-28

砂の女


★★★★★
昆虫採集に出掛けた先で遭遇する砂と女との生活。

そんな世界あるわけ無い。と思えるような世界が、男の追い詰められた必死さから、異様にリアリティーのある世界へと変貌して行く。
蟻地獄へと巻き込まれるように、話の中へとズルズルと引き摺り込まれ、やがて私も抜けなくなった。

一見すると砂に埋もれた特殊な部落の話に思えるが、これは全ての人の人生に当てはまる切れ端なんだと思う。

転職をしてこんな会社に入ってしまった、結婚してこんな生活に変わった。
人は多かれ少なかれ、自分が砂に埋まった家に閉じ込められたような、八方塞がりな状況を経験したことがあるのではないか。と。

どんな状況にあれ、その生活に慣れてもがかなくなった時、そこにはまた、新しい光が射し込んでくるのだろう。
という暗示的作品にも思えた。